安土桃山時代 鉄金箔押十二間阿古陀形筋兜
今回ご紹介する兜は安土桃山時代の春田宗次作、阿古陀形兜(あこだなりかぶと)です。
阿古陀形兜とは頭頂部がへこんでおりあこだ瓜の形に似ている兜です。
室町時代初期ごろに作られ始めたと思われますが、今現在定説がないようです。この形は兜を前後左右に膨らませることで打撃による力が頭に加わるのを防ごうとしたためと思われます。
阿古陀形兜は形が大ぶりのわりに軽量で、形や重さの点でも頭形兜(ずなりかぶと)に最も近い兜といえるでしょう。
一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 甲種特別貴重資料認定 |
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春田宗次
この兜の作者春田宗次の銘は室町時代末期から桃山時代・江戸時代初期にわたり、何代か襲名されています。
『集古十種』甲冑巻六所載によると、春日大社所蔵伝楠正成奉納の黒韋威胴丸は寛政の火災にあいましたが、三十六間の阿古陀形兜鉢には春田宗次と銘があるようです。
兜の変遷
平安、鎌倉時代は星兜と呼ばれる兜を形成する鉄板を星状の鋲でとめた兜が主流でした。南北朝頃から手間のかかる鋲状の星がなくなり、軽快な「筋兜」へ移行していきます。
そして室町時代には矧板を大きく膨らませた「阿古陀形兜」が作られるようになりました。今回ご紹介している兜がこの阿古陀形兜です。
戦国も乱世となると矧板枚数を増やし、堅牢さを重視した「筋兜」や「小星兜」とともに甲冑の需要の増大から短期に兜を大量生産するために、矧板枚数を減らした簡易的な兜、すなわち「頭形」、「突盔形」、「椎形」、「桃形」などが制作されるようになります。
戦国時代末期からは、下剋上の風潮と功名出世のための自己顕示により一番目に留まる兜に意匠を凝らしたものが使われるようになりました。このような変遷を遂げた兜を通じてそれぞれの時代感、美意識、デザイン感覚などを楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考文献
甲冑の美『変わり兜』むさし屋
『兜のみかた』頭形兜考 浅野誠一