[:ja]後藤一乗 特別保存刀装具 鐔
今回ご紹介する鐔は後藤一乗作、『児島高徳図鐔』です。
鐔の表には児島高徳(こじまたかのり)が桜の木に漢詩を掘っている様子が描かれており、裏にはその木に刻まれた漢詩が書かれています。
一乗の片切彫(かたきりぼり)が冴えた逸品。
児島高徳(こじまたかのり)とは
児島高徳(こじまたかのり)とは、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将で、備後三郎と称し備前の国の住人でした。
鎌倉時代最末期の元寇元年(1331年)、鎌倉幕府打倒を掲げる後醍醐天皇が北条氏討伐の軍を起こした元弘の乱の際、後醍醐天皇が諸国に兵を募り、それに呼応した一人が今回のモチーフの児島高徳です。
しかし、天皇方はこの戦いに敗れ、翌年3月天皇は隠岐に遠流されることになります。その噂を聞いた高徳は後醍醐天皇の奪還を画策しますが、その計画は失敗におわりました。
それでもなお、天皇の奪還をあきらめきれない高徳は深夜、天皇がいる美作の行在所・美作守護館に忍び込みます。
それまでとは段違いの警備がなされているのを見て、さすがに天皇奪還をあきらめた高徳はそばにあった桜の木に中国の故事『臥薪嘗胆』にならい、
「天莫空勾践 時非無范蠡」
(天は春秋時代の越王・勾践に対するように、決して帝をお見捨てにはなりません。きっと范蠡の如き忠臣が現れ、必ずや帝をお助けする事でしょう)
という漢詩を彫り、その意志と共に天皇を勇気付けたといいます。
ちなみに翌朝この桜の木に彫られた漢詩を発見した兵士は何が書いてあるのか理解せず、外の騒ぎに何があったか尋ねた後醍醐天皇一人のみこの漢詩を理解したと伝えられています。
鐔形状など
- 銘 時年七十四作 伯応(花押)
- 障泥形
- 鉄磨地 毛彫り 平象嵌 打返耳
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