第60回重要刀装具 富士越龍図鐔 銘 東竜斎法眼清寿(花押)
田中清寿は幕末の江戸金工を代表する上手であり、本名を田中文次郎といい、文化元年に武州の鐔工、田中房二郎の子として江戸で生まれました。
清寿は後藤清乗とも親交がある後藤宗次郎正乗のもとで鐔工として修業しました。
しかし本人は金工を好み、独学で金工を勉強、親の号を踏襲して東龍斎と号しました。
清寿は後藤一乗とも親交があり、時流に即した洒落た彼独島の東龍斎龍の作風を完成させ、『幕末三名工』の一人に数えらています。
流自・自流・我一格・一家式などの添え銘をきり、弘化二年には法橋に叙され、翌三年に法眼に進みました。
多くの門人を養成すると同人、数々の名作を遺し、明治九年、73歳で歿しています。
富士越龍図鐔:仕様
本作は珠をつかみ、果敢にも富士を目指して波飛沫を上げ駆け昇る螭龍(みずちりゅう)を壮大なスケールで描いています。
端正な障泥木瓜形で、よく練れた鉄に各種色金を多様な象嵌手法を駆使しつつまとめ上げています。
線で象嵌された雲が独特な雰囲気を醸し出しています。また飛沫の微細な梅雨象嵌にまで神経が行き届きかつ的確であり、清寿ならではの完成度の高い作品に仕上がっています。
【法量】 竪長さ 7.6センチ 横長さ 7.0センチ 耳の厚さ 0.45センチ
【品質形状】 障泥木瓜形 、鉄磨地、 鋤出高彫、金・銀・赤銅・四分一象嵌色絵、打返耳、両櫃孔(片金埋)
【時代】江戸時代末期