第25回特別重要刀剣 備前長船住左近将監長光造
今回ご紹介する長光は長船派の祖である光忠の子で、長船二代目になります。現存する在銘の作品は鎌倉時代の刀工の中でも最も数が多く、そのいずれもできにむらがなく卓越した技量の持ち主であったことが伺えます。長光の名品は数多く存在しますが、この太刀銘のように左近将監長光という銘が切られたものは数が少なく、こちらの太刀は貴重な一振りといえるでしょう。
そのほかの長光の代表作といえば国宝に指定されている6振り、国立博物館にある太刀(銘長光 大般若長光)、太刀(熊野三所権現長光)、徳川美術館所有の太刀(銘長光 名物遠江長光)、林原美術館所蔵の太刀(銘備前国長船住左近将監長光造)、太刀(銘長光)、佐野美術館所蔵の薙刀(銘備前国長船住人長光造)があげられます。
この太刀は、地鉄は板目が肌立ちごころとなり、地沸微塵に厚くつき、地景細かに入り、乱れ映りが鮮明に立ち、刃文は丁子乱れに互の目・尖り刃などが交じり、総体にやや焼低く、処々飛焼きかかり、足・葉盛んに入り、匂口明るく匂勝ちに小沸が付き、金筋・砂流し細かにかかるなど、地刃に長船長光の後期に見る典型的出来口が示されている。長寸で反りの高い生ぶの太刀姿が貴重であり、特色ある刃文は匂立ちよく華やかに乱れ、永仁二年紀も好資料である。(重要図譜より)
ほかに備前長船派を代表する長義の特別重要刀剣( 金象嵌銘:長義(附)黒蠟色塗鞘打刀拵 )をご紹介しているページはこちら
第58回重要刀装 金梨子地葵紋散金蒔絵鞘糸巻太刀拵
こちらの太刀には江戸時代中期に作られた糸巻太刀拵が合わせられています。
糸巻太刀拵は、近世における武家の兵仗・儀仗太刀拵の一つであり、また社寺奉納や贈答用太刀拵として上層武家において多く用いられた拵形式である。総金具は赤銅魚子地に金で家紋を散らし、鞘は多くは金梨子地、まれに金沃懸地とし、多くは家紋を蒔絵や金金貝で表している。柄及び渡巻には金襴を着せた上に糸巻にするところからこの種の太刀拵を糸巻太刀拵と呼称している。
本作は総金具が赤銅魚子地に葵蒔絵を金蒔絵であらわし、目貫は葵紋三双図とし、つばは刳込葵木瓜形、大切羽に葵紋を散し金色絵金小縁を施している。鞘は金梨子地に葵紋を散し金を蒔絵し、渡巻と柄巻の巻下は金襴包みである。葵紋を品良く散し、金梨子地の糸巻太刀拵としての格式をきわめて高く保ち、保存状態も頗る健全である。制作年代は江戸中期の鑑せられた一口である。
(重要刀装図譜より)