森記念秋水美術館「北国物のきらめきー北陸の名刀展ー」開催中
越中(現在の富山県)を中心に北陸三県で製作された古刀が展示されています。
見所は日本刀最高峰正宗の兄弟子・則重や郷義弘などの古刀の名刀がご覧いただける展示会です。
会期は8月26日までですので北陸方面へお出かけの方は足を延ばしてみるのはいかがでしょか?
相州住五郎入道正宗の門下生の中でも高弟と言われる10人の刀工、いわゆる正宗十哲と呼ばれる中の一人に挙げられる郷義弘と則重はともに鎌倉時代末期の越中刀工です。
郷義弘は在銘作が一振りも残されておらず、郷義弘の刀の多くは本阿弥家の極めになるものです。そのため「化け物と義弘は見たことがない」と言われるほど名匠とされながら実在があやふやとされる伝説の名刀工です。
郷義弘の作風は相州伝ですが、正宗や則重ほどは沸の変化や地景・金筋が露わでなく、地鉄は柾がかるものもありますが、多くは板目がよくつんで澄み晴れやかで地景も細やかであり同じ越中の則重に見られる北国特有の黒みがありません。また刃文は一般に乱れの出入りは著しからず刃中に沸足がよく働き、美しく輝く刃沸が見られ、しかもその沸の粒に大小が少なく、匂口が深々と見えて明るく冴えわたりいかにもあか抜けた感があります。帽子の焼きが深いのも特徴です。
郷義弘の名刀と言えば『享保名物帳』に所載する国宝・稲葉江、名物松井江(佐野美術館)、本多美濃守所持名物・桑名江(京都国立博物館)、名物五月雨江(徳川美術館)、刀剣乱舞キャラクターで有名な篭手切江などがあげられるでしょう。
一方の則重は鎌倉末期に越中国婦負郡呉服郷に在住した名工で、彼もまた江戸時代以来相州正宗十哲の一人に数えられていますが、室町時代に見る正宗同門説が正しいと思われます。つまり、行光、正宗等と同じく、相州鎌倉に住した新藤五国光の門に学び、相州伝の大成に尽くした一人と言えるでしょう。
則重の作風は正宗に最もよく似て、正宗よりも一段と地景がはげしく肌立ち松の木の表面の肌を見るような感じでいわゆる則重肌と称されています。正宗と同様に硬柔の鋼を組み合わせた作風であり、刃文も湾れに丁子を交えて匂口が沈み、金筋、稲妻などの働きは見事です。正宗には在銘の作が極めて少なく、わずかに銘のあるものは2~3の短刀に限られていますが、則重の場合短刀にはほとんど銘があります。短刀は則重が最も得意としたものと思われ、太刀には短刀ほどの優れたものが少ないです。
参考文献
「武将とその愛刀」佐藤寒山
「刀剣鑑定読本」 永山光幹