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粟田口藤四郎吉光 小太刀(打刀)第12回特別重要刀剣-京都国立博物館出品
粟田口藤四郎吉光は新藤五国光と並ぶ短刀の名手として名高く、名物:薬研藤四郎(やげんとうしろ)や骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう)など多くの短刀が作られました。一方、短刀以外の遺例は太公豊臣秀吉の愛刀で今は再刃となっている名物『一期一振藤四郎』の太刀一振りのみとされていましたが、近年その存在が知られるようになったのが今回掲載の打刀の走りとみられる吉光の小太刀です。
地鉄に潤いがあって、地景がよく入り明るく冴える鍛えと刃縁に輝く沸がつき、二重刃風を見せた典雅な直ぐ刃調の刃文には粟田口派の美点があまねく見られ見事な出来映えです。
藤四郎吉光を鑑賞
こちらの吉光の小太刀を勉強し始めたばかりの刀剣初心者の私も拝見いたしました。
はじめLEDライトの下で手に取ってみたのですが、沸と呼ばれる刀独特の細かな美しい輝きや金筋と呼ばれる筆で描かれた線のような細く光るきらめきがよくわかりませんでした。ところが白熱電球の下再び見てみると、吉光をわずかに傾けるたびに全く違う表情を見せ始めました。まるでさざ波により変化しながらキラキラと輝く水面の様に美しい光を放ち始めたのです。そしてその輝きを支えるのは鍛え抜かれた詰んだ地鉄でした。
刃文とは違う静かで冴えわたる明るい地鉄の吸い込まれるような美しさに刀という殺傷能力の高い武器を手にしながら私は心が静まっていくのを感じました。
この刀を手にした武将がどのようなことを感じていたか、今となっては知る由もありません。私の想像でしかありませんがやはり戦地に赴くにあたり、心を静めるため、覚悟を決めるため刀を愛でたのではないでしょうか。そして己の持つ刀への畏敬の念を深めたではないでしょうか。一人静かに刀に向きあう時間を持つことで己の生死をかけた戦いを目前に覚悟を決め、臨んでいたように思います。
名刀には逆説的ですが武器でありながら心を静めるように働きかける力があります。
吉光を手にしていたのは僅か数十分です。それにもかかわらずゆったりとした悠久の時の流れに身を任せているようなとても静謐でどこか違う時空間を漂うような不思議な時間感覚を感じました。
この名刀吉光を2018年9月29日から京都国立博物館で開かれる特別展・京(みやこ)の刀展にてご覧いただけます。千年近く時が流れても変わらぬ姿の刀をぜひ実際にご覧ください。
鍛え抜かれた刀がもつ魅力を通じて私たち日本人が脈々と継いできた武士魂を直に感じて頂けたければ幸甚の至りです。
そのほか藤四郎吉光の短刀をご紹介します。
粟田口藤四郎吉光短刀コレクション
名物:後藤藤四郎 出展:『 日本のかたな 鉄のわざと武のこころ 東京国立博物館』 | 名物:平野藤四郎 出展:『 日本のかたな 鉄のわざと武のこころ 東京国立博物館』 |
一期一振 豊臣秀吉愛刀 出典:『 図説刀剣名物帳 』 | 鯰尾藤四郎 徳川家康愛刀 出典:『 図説刀剣名物帳 』 |
名物 毛利藤四郎 出典:『 図説刀剣名物帳 』 | 名物 前田藤四郎 出典:『 図説刀剣名物帳 』 |
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