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鑑定士マイク山崎が世界に伝えるサムライ文化

鑑定士マイク山崎が世界に伝えるサムライ文化

「これは大名の刀だ!1億円の価値がある!そう言って持ち込まれたお宝が、私の目から見たら5千円の価値しかない……。そんなことは日常茶飯事ですよ」

そう語るのは、ロサンゼルスを拠点に活動する日本刀鑑定士、マイク山崎氏。全米で絶大な人気を誇るテレビ番組「Pawn Stars(アメリカお宝鑑定団)」に15年前から出演し、日本刀の真価を世界に問い、伝え続けている。

海外では、未だチャンバラとしてのイメージが強い日本刀。その「芸術」としての価値と、そこに宿る「サムライソウル」を伝える彼の原点、そして次世代への熱き使命感に迫った。

日本刀の真価を問う鑑定士

マイク山崎氏の名は、今やアメリカの日本刀愛好家で知らぬ者はいない。人気番組「Pawn Stars」での鑑定は、エンターテインメントとして消費されがちな日本刀のイメージを覆し、本物を見抜く目の重要性を全米に知らしめてきた。

「海外では、サムライ=チャンバラのアクションのイメージがどうしても強い。しかし、日本刀は武器である前に、世界に誇る美術品なんです」

彼が常に発信し続けるのは、アクション映画の小道具としての刀ではない。鉄の地肌、刃文の輝き、そこに込められた精神性という芸術としての価値だ。

原点はGHQに接収され海を渡った刀たち

マイク氏と日本刀の縁は、13歳で始めた「居合道」まで遡る。武道を通じてその精神性に魅了され、22歳で本格的に刀の世界へ足を踏み入れた。大きな転機が訪れたのは25歳の時。ある事実を知り、彼は大きな決断を下す。

「当時、アメリカには戦後GHQに接収され、お土産(スーベニア)として海を渡った日本刀が数多く眠っていました。本来あるべき場所を失った刀たちです。私はそれを200本まとめて買い付け、日本へ里帰りさせました」

歴史の波に翻弄された刀を救い出す。この強烈な実体験が、彼の鑑定士としての礎となった。30年前、師匠である田野辺先生の門を叩き、東京で集中的な修行に没頭したのも、この経験から本物を見抜く経験の重要性を痛感したからだった。

銘ではなく本質を見る眼

マイク氏が鑑定において最も重視するのが、表面的な情報に惑わされない「眼」だ。

「一般の方は、刀の茎(なかご)に刻まれた銘(作者の名)に注目しすぎている。でも私は、本当に貴重な刀には銘が入っていないことを伝えたい。立派な銘が入っていても偽物だったり、出来が悪かったりする刀は山ほど見てきましたから」

たとえ無銘であっても、地鉄や刃文に宿る美しさを見抜く。それこそが、彼が伝えたい「芸術」としての価値だ。

ロサンゼルスの文化発信拠点「ジャパンハウス」での展示プロデュースなど、彼の活動は常に刀の本質的な美を言語化し、伝えることに注がれている。

ギャップの中で見つけた眞玄堂との出会い

近年、配信ドラマ「SHOGUN」の大ヒットを受け、アメリカでは空前の日本文化ブームが起きている。しかし、マイク氏はその熱狂の裏で、ある種の危機感を抱いていた。

「アメリカがこれほど盛り上がっているのに、日本の方々が自国の文化に無関心に見えてしまう。これでいいのでしょうか」

そんな彼が、希望の光として名を挙げたのが、日本の老舗刀剣店「眞玄堂」の存在だ。文化継承の鍵は「教育」にあるとマイク氏は断言する。

日本の伝統的な指導では危険を理由に遠ざけがちな刀を、眞玄堂は次世代へと積極的につなぐ役割を果たしているという。

「彼らは若い人にも骨董の価値を伝え、新しい文化の担い手を作っている。私もその姿勢に深く共感しています」

海外だからこそ見える「サムライソウル」と未来

マイク氏の指導法もまた、実践的だ。 「スマホやゲームに夢中な若者たちに、あえて本物を持たせるんです。『正宗が見たい!』と言われれば、すぐ渡しますよ」

鐔(つば)の精緻な彫刻や、冷たい鉄の重みを肌で感じる。その瞬間、彼らの目に宿る輝きこそが、マイク氏の信じる「サムライソウル」の芽生えだ。

「理屈じゃないんです。見た人が『カッコいい…』と目を輝かせる。そのワクワクする感情こそが、文化を未来につなぐ大事なエネルギーです」

平安時代の古刀や、歴史上の偉人が手にした一振り。それらは単なる鉄の塊ではなく、人と人をつなぐ存在であることを彼は力強く語った。

そして、マイク氏は笑顔でこう締めくくった。

「刀は、私の人生に活力を与え続けてくれる、相棒のような存在ですね」

海を越えて再評価される日本刀の価値。私たち日本人が忘れかけていたその魂は、マイク氏や眞玄堂のような繋ぎ手によって、確かに次の世代へと受け継がれている。

刀剣鑑定家/TETSUGENDO主宰

Mike Yamasaki(マイク・ヤマサキ)


ロサンゼルスを拠点に、日本刀・甲冑・武具などサムライアートの鑑定・売買・研究を行う、アメリカ屈指の日本刀専門家。幼少期から武士文化に魅せられ、日本国内の刀匠・刀剣商・研究者との交流を深めながら、独自の鑑識眼を磨いてきた。

これまでに数多くの刀剣と武具を取り扱い、北米における日本刀の第一人者として広く知られる。米国最大級のオークションハウスでも日本美術部門のスペシャリストを務め、希少刀剣の評価・選定を担当するなど、各地で専門家として活躍している。

その卓越した知識と審美眼から、テレビ出演も多い。
NBC「Antiques Roadshow(アンティークス・ロードショー)」 では日本刀専門家として出演し大きな反響を呼び、人気番組 History Channel「Pawn Stars(アメリカお宝鑑定団 ポーンスターズ)」 にも刀剣の鑑定士として登場。日本刀の価値や歴史的背景を的確に解説し、世界中の視聴者にサムライアートの魅力を伝えてきた。

現在は、サムライアートギャラリー TETSUGENDO(鉄元堂) を主宰し、日本刀を中心に甲冑・武具・古美術の展示販売を行うほか、講演や教育活動を通じて武士文化の継承にも力を注いでいる。

TETSUGENDO
https://tetsugendo.com/