知る

刀剣の種類を見分ける入門ガイド②

刀剣の種類を見分ける入門ガイド②

「刀剣って、日本刀以外にもあるの?」
「薙刀や槍は、どんな場面で使われていたのだろう?」

博物館や資料館で刀剣を見ていると、刀とは明らかに形の違う武器が展示されていることに気づくこともあるでしょう。

たとえば、刀剣にはまっすぐな刃を持つものや、長い柄の先に刃が付いたものなどがあります。 日本の武器は、単なる形の違いで生まれたのではありません。そこには、戦い方・時代背景・社会の変化に応じた、はっきりとした理由がありました。

本記事では、日本刀以外に使われてきた剣・矛・槍について、それぞれの特徴と役割をわかりやすく解説します。

武器の形は戦い方で変化した

日本の武器を理解するうえで大切なのは、「どう戦うか」といった視点です。 一対一で戦うのか、多くの兵で戦うのか。相手に近づいて斬るのか、距離を取って攻撃するのか。

こうした条件の違いによって、武器の長さや形は自然と変わっていきました。ここからは、それぞれの武器が使われた理由を順に見ていきます。

神話や儀式にも残る剣

剣(つるぎ)は、日本で最も古い時代から使われてきた武器の一つです。最大の特徴は、今の日本刀とは違い、刃が両側についている両刃(もろは)であることです。形も反りがなく、まっすぐな直刀でした。

この時代(古墳時代〜奈良時代頃)の戦いでは、斬るよりも突く動作が重視されていました。そのため、反りのない直線的な形が使いやすいと考えられています。

戦闘用から神様の道具へ

剣は実戦用の武器である一方、神話や儀式にも深く関わっています。 有名な「三種の神器」の一つである草薙剣(くさなぎのつるぎ)も、この種類の武器です。

時代が進んで日本刀が主流になっても、剣は神仏の力を宿す特別な存在として、お寺や神社の儀式で使われ続けました。

お守りとしての役割

現在でも、剣は魔除けのお守りとしての意味を持っています。仏像が手に持っていたり、お守りのデザインに使われていたりと、武器として使われなくなった後も、私たちの身近なところで守りの象徴として存在しています。

槍のルーツである矛

矛(ほこ)は、長い柄の先に刃を取り付けた武器です。形は槍に似ていますが、決定的な違いはその取り付け方にあります。

槍との違い

槍は刃の根元を柄の中に差し込みますが、矛は刃の根元がソケット状になっており、柄を差し込んで固定します。 刃は幅が広く、先端が丸みを帯びているものが多くありました。これは突くだけでなく、斬ることもできるためです。

戦場から祭りへ

矛は、弥生時代から古墳時代にかけて主力武器でした。しかし、作りが複雑でコストがかかるため、次第にシンプルな構造の槍や薙刀などに取って代わられました。

武器としての登場頻度が減っても、威厳ある姿は祭具として残り続けています。京都の祇園祭で見られる「山鉾(やまぼこ)」のてっぺんに飾られているのも、この矛です。

神話での重要な役割

矛という言葉は、神話でも重要な役割を果たしています。日本列島を作ったとされる「国生み神話」では、イザナギとイザナミが「天沼矛(あめのぬぼこ)」を使って海をかき混ぜ、日本が生まれたとされています。

矛は、単なる武器以上に、国づくりのシンボルでもあったのです。

集団戦で最強を誇った槍

槍(やり)は、矛の構造をよりシンプルかつ頑丈に進化させた武器です。細く鋭い刃を持ち、突く動作に特化しています。

込み(こみ)による頑丈さ

槍は、刃の根元にある「茎(なかご・込み)」と呼ばれる棒状の部分を、柄の内部に深く差し込んで固定します。これにより、矛よりも衝撃に強く、折れにくい構造になりました。

戦国時代の主役

戦国時代に入ると、戦い方は一対一の騎馬戦から、足軽(歩兵)による集団戦へと変わりました。 長い槍を揃えて壁のように並べ、一斉に敵を叩いたり突いたりする戦法は非常に強力でした。

誰でも扱いやすく、大量生産もしやすかったため、実際の戦場では日本刀よりも槍のほうが多く使われ、戦の勝敗を握る重要な武器となったのです。

長さや形のバリエーション

槍にはさまざまな種類があります。刃が長い「大身槍(おおみやり)」や、刃が十字や鎌の形をした「鎌槍(かまやり)」など、戦い方や使い手の好みに合わせて多くの工夫が凝らされました。

中には数メートルにも及ぶ極端に長い槍もあり、敵を威嚇する効果も高かったといわれています。

まとめ

紹介した3つの武器は、それぞれの時代で重要な役割を果たしました。しかし、江戸時代に入り大きな戦がなくなると、状況は変わります。

集団戦向けの武器は次第に使われなくなり、携帯しやすく、身分や精神性を示す日本刀が重視されるようになりました。日本刀は、戦うための道具から、文化や価値観を表す存在へと役割を変えていったのです。

それぞれの武器を知ることで、日本刀がどのような立ち位置にあったのかも、分かりやすくなります。 展示室でこれらの武器を見かけたときは、形の理由を考えながら眺めてみてください。当時の戦いと、人々の工夫が表れている点が見えてくるでしょう。